神々の世界 (上) (小学館文庫)



神々の世界 (上) (小学館文庫)
神々の世界 (上) (小学館文庫)

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海洋考古学という希望

 七百頁のそれも前半だけしか読み終わらずに一言言うのもあり得ない話だが、著者ハンコックの関心は当初より一万年前の失われた文明に向けられていて今回は特に氷河期の終焉に伴う数千年ごとの三度の海面上昇による洪水によって埋もれた文明を追っている。日本の与那国島を初め印パ間の沿岸地帯が議論の中心だ。一万五千年前、一万千年前、そして八千年前という丁度数千年ごとの氷河融解による洪水はその都度、河川の周囲に発展していた古代文明を数十メートル、百数十メートルの海水が覆ったはずだ。その結果、世界では神話と宗教という形で洪水物語が一様に残され、ピラミッド建築という洪水により埋没した祖先の文明の追悼が大規模な祭祀として実施された。ハンコックは文明以前の文明の起源を探究し、人類の究極的な謎に迫ろうとしている。
 問題は、到底現代の技術でさえ及びもつかない巨大建築と宗教意識、物語能力を身に付けていた古代人が、超古代人、と言って悪ければ第三次洪水以前の古代人、第二次洪水以前の古代人、第一次洪水以前の古代人とそれぞれ分類されるだろう数千年に渉る文明が滅亡した文明より先なのか、ということである。実は、それらの太古人の方がもっと高度かも知れない、ハンコックはそれに気付いていて、気付いている故に全く不整備の海洋考古学の今後の発展が如何に重要な問題を孕んでいるか、を説いている。彼は今や伝道師だ。差し当たりは彼の知的にスリリングかつエキサイティングな探究に付いていくことが何より楽しいだろう。しかし、問題の行き着く先、結果として何が見えてくるか、歴史はひっくり返されねばならず、〈意識に直接作用する人格的存在〉の問題というあの幾ら議論しても微妙すぎて疲れ果ててしまうあの問題に、決定的な手かがりが与えられるか、それとも、止め処ない泥沼に入ってしまうか、そういう一か八かの場面がいずれ訪れるということだ。



小学館
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